こちらのブログでも、Newsletterでも度々書かせて頂いていることではあるのだけど、2020年〜2023年の中頃まで「心穏やかに働きたい」というのが切なる願いであり、昨年7月に退職、8月に独立してフリーランスになってからは「心穏やかに働く」ことが出来ています。
41回目の誕生日を心穏やかに迎えられたことに感謝うつ病を発症し、休職が必要な状況にまで追い込まれたことは決して美談にできるようなものではないですし、2024年現在も完全回復と言える状態ではありません。
心の平穏を取り戻した後も「あの時自分はどうすべきだったのだろう」という問いを幾度となく自分に投げかけてきましたが、何が悪かったかとか、どうするのが正解だったかというのは一概に言うことはとても難しいです。
自責の念を少し和らげてくれた一言
環境がヤバかったと言えばそれまでですし、心療内科の先生からも「北さんの場合は完全に環境要因ですから」と何度も言われたので支配的な要因であったことは間違いないと思います。
それでも、心の奥底で「自分の認知が歪んでいたのではないか?」「自分が弱かっただけなのではないか?」「逃げ出さずに頑張るべきだったのではないか?」という自責の念が常につきまとっていました。
言葉を選ばなければ「最悪の環境から逃げ出す」ことで、心の平穏を取り戻し、心身が壊れ行く一方であった状況から回復軌道に乗せることができたわけですが、その決断は周囲に大きな負担を強いることになりましたし、期待を裏切ることにもなりました。二度目の休職に追いやられるまで辞める決断ができなかったのは、自分勝手に、自分の為に、責任を全て放棄することに大きな抵抗があったからです。
偶然にイベントでご一緒した臨床心理士の山崎孝明さんにそんな話をしたときに掛けて頂いた言葉が
「三回繰り返したら自分を変えた方が良い」
でした。確かに、異なる職場環境で3回大変な状況になって辞めることを繰り返しているのであれば、何らか自分の認知に歪みがあるのかもしれないし、やや辛抱が効かない性格なのかもしれないわけです。ただ、今は環境を変えたことで問題が解決できていて、今は上手くいっているのだから「それはもう環境の問題でしょ」と。
そりゃまぁ、自分にも原因はあったと思うし、出来ることなら物事をもう少し楽観的に捉えて、多少のストレスなどに動じない人間にはなりたいとも思いますが、だからといって人には限界ってもんもあるし、無理なもんは無理だろうし。
だから、そんな何が正解だったかなんて最早誰にも分からないことに悶々と悩むよりも、「三回繰り返したら自分に原因を求める」ぐらいに考えた方がずっと気が楽です。
環境が原因であれば環境を変えるのも一手だし、認知行動療法にせよ、精神分析にせよ、色々アプローチがあるので一概には言えないと思うのですが、それでも「プロに相談する」ことは大事であるなと思いました。(この時はカウンセリングではなく飲みの席だったので相談というより雑談だった訳ですが)
「心安らかに働きたい」は意外に共通的な悩みなのではないか
今回、山崎さんをゲストにお招きして東京ライフハック研究会をやろうと思ったのは、「きっと心安らかに働きたいと思っている人は多いんじゃないか」という直感があったからです。
勿論、ゴリゴリに精神を削られる環境でうつ病になって心身をぶっ壊すところまで行かなくても、不安で仕事が手に付かないとか、自責の念に駆られて夜寝れなくなるとか、怒られるのがしんどいとかって悩みはあるんじゃないかと思うわけです。
いくら神社に行って「いつかまた普通に働けますように」「心安らかに働ける日がまた来ますように」と願ったところで、実際の所は環境を変えるなり、自分の物事の捉え方を変えるなりの何らかの変化が無い限りは問題は解決しないわけです。
或いは、もしも2020年で心療内科を受診する前の自分が山崎さんと知り合いであったなら、認知行動療養や精神分析、或いは精神分析的サポーティブセラピー(Psychoanalysis Originated Supportive Therapy : POST)を知っていたならば、また違った世界線があったんではなかろうかとも思う訳です。
当時の自分のうつ病や休職への理解なんて「うつ病になったら薬を飲んで仕事を休むことになる」位のものでした。うつ病を発症してから色々と勉強してもう少し解像度は上がったと思いますし、認知行動療法や精神分析といった様々なアプローチがあることに後から気付きました。
主治医の「あともうちょっとですね」という言葉が嬉しかった
先日、主治医の診察を受けてきたのですがその時に言われた言葉が「次の診察で投薬を止めるかどうか判断しましょう。あともうちょっとですね。」でした。
2020年5月に妻に引きづられる様にしてやってきた心療内科で、投薬を薦められ続けて半年承諾を引き延ばし、結局為す術なく休職へと突き進み、2021年〜2022年の2年間で大幅に回復を果たすも、また2022年夏〜2023年春にしんどい状況へと逆戻りして再度の休職を余儀なくされ、2023年の7月に退職を決断しました。
思い返せば、投薬治療も休職も退職も、主治医から言われてから決断までにずるずると時間を掛けてしまって物事を悪化させてしまいました。一進一退というか、一向に改善しない職場環境に「職場を変えられないなら認知行動療法を受けた方が良いのではないか?」という提案を受けたこともありました。
結局2年ぐらい言われ続けていた「環境要因が大きいので転職を考えた方がよいのではないか?」という提案の通りに退職し、独立してから後、劇的に状況は改善し、体調も回復の一途を辿っています。
普段はちょっと怖くい主治医が、少し嬉しそうに「あともうちょっとですね」という言葉を掛けてくれたことがとても嬉しかったのです。投薬を終えた後寛解にいたるまでにはもう少し時間が掛かると思いますが、今は朧気ながらもゴールが見えてきた様に思います。
心の奥底に「あの時自分の考え方が違えば結果は違っていたのだろうか?」という慚愧の念が未だに突き刺さってはいるのですが、それでも今「終わりの見えないトンネル」を抜けて「あとちょっと」という状況まで改善をしたというのも紛れもない事実なわけです。
であるならば、今はそれで良しとしようと思います。考え続ける事は止めなくても良いと思うのですが、自分を責め続ける事はもう止めにしたいと思います。
さいごに
環境を変える決断をしたことで、今は「心穏やかに働く」ことができています。しかしながら、辞める決断をするときも、したあともずっと「あの時もっと○○だったなら・・」という想いを拭い去ることは出来ませんでした。
1月20日の東京ライフハック研究会では「安心して仕事に向かう考え方」をテーマにやるのですが、半分は個人的に「あの時どうすればよかったのだろう」という喉の奥底に突き刺さった魚の骨を取りたいという目的があり、もう半分は「仕事の中で不安や怖れを抱いている人に役立つだろう」という直感であります。
もしもあなたが「安心して仕事に向かいたい」と思っているのであれば、是非参加をご検討頂けますと幸いです。一方的な講演と言うよりは、登壇者と参加者でインタラクティブにやりとりができる会にしていきたいと考えております。
参考文献
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