さて、前回の記事で宣言したとおり、3/26に奈良でやった「ビジネスパーソンの知的生産」の講演内容を簡単に紹介しておきたいと思います。
実際の講演は、ここで紹介する内容の10倍以上の濃さはあるので、興味が有る方は次の東京開催に是非足を運んで頂ければ幸いです。(まだ開催時期未定ですが)
■ビジネスパーソンの知的生産の概要
これまで、僕の中では「BECK(@beck1240)」というネット上の人格は、リアル社会でビジネスを営む「北真也」と明確に一線を引いていました。実名は晒してますが、会社名は伏せてきたんですよね。
単純な話で、僕がやってることはそもそも会社とは無関係だって話と、何かあった時に会社に迷惑はかけられないってのが大きな理由ですね。
しかしながら、今回はかなりリアルな仕事の話をしました。なんせ「ビジネスパーソンの知的生産」ですから、これで本職について触れないというのは流石に無理があります。
勿論、守秘義務にひっかかる内容は話せませんので一般論中心でしたが、3GPPだとかTMFだとか、まさか仕事以外で口にするとは思ってなかったので、ちょっと新鮮でした。
■今回の狙い
今回の講演の狙いは「自分の専門領域で成果を出す為の知的生産スキル」とそのベースとなる「専門知識の身に付け方」をブログ等々絡めてお伝えするというもの。
■ビジネスにおける知的生産とは?
まずは、ビジネスにおける知的生産を定義せねばなりません。
まずは基本的な所から、ドラッカーの「知識労働者」であったり、梅棹先生の「知的生産」についてふれつつ、端的に「頭を使って新たな価値を生み出すこと」を本講演における知的生産の定義としました。
究極的にはビジネスに於ける知的生産は付加価値あるアウトプットを出す事であり、成果にFocusし、QCDを意識し、計画を立てる必要があると実にお堅い展開で話させて貰いました。(実際の講演ではこの辺を深めに掘り下げてます)
面白かったのが、「知的生産」に絡めて計画・軌道修正について僕が述べたのと、まるで呼応するかの如く、倉下さんも「セルフマネジメントが重要」という論を説かれたことです。
レポート記事の方にも書きましたが、”お互いの仕事の中で「価値を生むこと」を強く求めていて、その為に必要な仕事の流れを確立している”、という点は職業を超越した知的生産の原理の様なモノなのだろうと思います。
■ビジネスパーソンの知的生産術
僕は第1章で「知的生産とは?」とお堅い入りをしたのですが、第2章で「ビジネスパーソンの知的生産術」と思いっきりライフハックに振っていきました。
「情報を集める技術」「情報を整理する技術」「考える技術」「アウトプットを生み出すための技術」という分類で、それぞれ僕自身が実践しているテクニックや考え方を紹介しました。
「情報を集める技術」に関しては「メモ/ノート」「読書」「新聞雑誌」「ネット」「専門情報」にカテゴライズして、それぞれをどう収集し、Evernoteに蓄積していくかについて紹介しました。(その内掘り下げて一つ一つブログに書きたいと思います)
中核となるのは当然Evernoteなので、例えば、StackOneとScannable、そしてEverClip2という僕なりの「Evernote3種の神器」をどう使っているか、という実にライフハック的な内容をお話させて貰いました。
また、会社ではEvernoteが使えないので、代替手段についてお話をしたり。参加者のほぼ全員が会社でEvernoteが使えないとのことだったので、ちょっと熱めに語ってしまいました(笑)
例えば、集めた情報を共有フォルダに格納して、どういう資料がどこに格納されているかというまとめメールをFYIで社内に投げると、そのメール及びインデックス情報が後から検索出来るようになるとか・・まぁ、そんな感じのネタをいくつかお話した次第です。
ちなみにですが、アイデアを出す為のテクニックとして「アイデアのつくりかた方」はもう鉄板中の鉄板です。
集めた情報をどう使っていけばアイデアを生み出し、アウトプットにつないでいけるかの原理原則を学べる素晴らしい一冊です。
これは「考える技術」だけではありませんが、基本的にこの手のテクニックは「見よう見まね」でやってみるのが一番です。
古典的なフレームワークは「面白く無い」と感じるかも知れませんが、色々な軸で分析してみた結果、見えなかったものが見えてきたり、全く新しい着想に繋がることがあります。
僕も、とりあえず手元の情報を「まずは型にあてはめてみる」ところから思考を開始します。この時できるだけ紙などに書き出すようにすると、思考がグルグル回ることを予防できたり、2時間前に考えた整理軸と今の分析が急に繋がったりといったメリットが得られるので、オススメです。
実は集めた情報を整理したり、メモや着想を太らせる(追記する)だけでも結構アイデア発想の刺激としては悪くないのですが、Mindmapやマンダラートみたいなアイデア発想ツールを使うことで誘発できる可能性は更に高まります。
アウトプットを創り出す前にWorkflowyみたいなアウトライナーでアウトラインを決めたり、
いきなりを絵を描くんじゃ無くて紙に落書きしたり、下書きを書いてから推敲するほうが、結果的に早くて良い物ができるたりします。
知的創造と物的創造について言及した7つの習慣の「全ての物は2度作られる」という言葉は、知的生産にも大いに当てはまることだなぁと思う次第。
■専門家になる瞬間を
続く3章は、「専門家になる瞬間を」ということで、専門知識とは何か?専門家とは何か?についてお話させて貰いました。
昨今の「インターネットがあれば情報を記憶する必要はない」みたいな風潮はちょっとなぁっと感じています。
頭の中に体系的に理解して、活用可能な形となっている「専門知識」が無ければ、新しい何かを生み出すことは出来ません。
知的生産が「頭を使って新しい価値を生み出すこと」だとすると、「新しい価値」を判断するためにも「既に生み出された価値」を知っている必要があります。
例えば、特許(発明)を書く場合なんかには
- 自分のアイデアの何が「新しい」のか証明する必要がある
- 新しいアイデアを瞬時に「これは新しいぞ」と気づけるようになっていないと、新しいと思ったけど実は既に特許が取られました、という無駄玉ばかり打つことになる
- 素晴らしいアイデアを「どうせ誰かやってるよ」と見過ごすことになってしまう
ただ、専門知識というのは別段「特別で、他の誰も知らない事柄」ではなく、実は誰でもアクセス可能な「普通の知識」の集合体でしかなかったりします。
自分の中に「普通の知識」を積み重ねて、組み合わせたり、使ったりする内に専門知識に昇華してきます。
そして、ビジネス上求められるのは「誰も思いつかない様な凄いアイデア」ではなく「今困っている事を解決するアイデア」であることが殆どです。世の中一般的な整理学、フレームワーク、業界動向、技術標準で解決出来てしまう場合も多いものです。
まずは仕事の内で必要な「普通の知識」を積み重ね、それを使ってアウトプットを生み出し、「専門知識」の土壌を培っていきましょう。
ある程度「専門知識」が培われると、或るタイミングで「あ、今最先端に触れたぞ」という瞬間を覚えることがあります。(例えば、調べる文献がパタッと無くなったり、最新技術過ぎて世界中で試行錯誤が行われている領域で、自分が青写真を描く必要に迫られたとき)
この「最先端に触れたぞ」という感覚を覚えたとき、少し自信を持って「僕は○○の専門家だ」と言える様になる。則ち、専門家としてのアイデンティティが生まれるのです。
ブログは必ずしも仕事に関する情報を発信できるとは限りませんが、「普通の知識」を使ってアウトプットを生み出す良いトレーニングになります。
また、「専門知識」と言うのは必ずしも、学術的、市場的、あるいは技術的に同一領域の知識のみで構成されるとは限りません。異なるジャンルの知識、あるいは専門領域とは全く関連しない教養があなたの知識と知識を結びつける接着剤になったり、新しい閃きのヒントになったりする事も決して珍しくはありません。
僕の場合、ブログを書くという「沈思黙考型アウトプットの素振り」と、勉強会という「即応型アウトプットの素振り」を持つようにしてきたのですが、これららがアウトプットの効率を高め、結果として専門知識の蓄積スピードを速めたことを実感として持っています。
■最後に
結構はしょったつもりだったのですが、かなり長文になってしまったので、最後に少しまとめておきます。
- ビジネスにおける知的生産とは?
- 知的生産とは「頭を使って新たな価値を生み出すこと」
- ビジネスに於ける知的生産では、成果にFocusし、QCDを考慮し、計画を立て、実行しながら軌道修正を行う必要がある
- ビジネスパーソンの知的生産術
- 知的生産を行う為には「スキル」と「専門知識」の両方が必要
- スキルは「情報を集める技術」「情報を整理する技術」「考える技術」「アウトプットを生み出すための技術」に分類されるので、それぞれにやり方を工夫する
- 考える技術は「フレームワーク」をまずは見よう見まねで使ってみると良い
- 考える時は紙に書き出すようにすると、思考がグルグル回るのを防止したり、少し前に考えた事柄と今の考えが繋がったりするメリットが得られる
- アウトプットを行う際は、まずはアウトラインを決めたり、下書きをしてから清書に移る方が、結果的に早くて良い物が出来る
- 専門化になる瞬間
- 新しい価値を生み出すためには「専門知識」が必要
- 何が「新しい価値」かを判断するためには「既に生み出された価値」を知っている必要がある
- 「専門知識」は「普通の知識」を積み重ね、組み合わせたり、使ったりすることで培われる
- 「専門知識」がある程度培われ「最先端に触れた」と感じたとき、専門化としてのアイデンティティが生まれる
- 「知識を使ったアウトプットの素振り」としてブログは非常に優れている
- 素振りを繰り返すことで、「知識を使ったアウトプット」の効率が高まり、結果として「専門知識」の蓄積スピードを速めることが出来る
次に東京でやるときには、更にブラッシュアップしたバージョンでお届けできればと思います。
プレゼンの中で紹介した本とアプリ