映画「風立ちぬ」を観ました。
零戦の生みの親、堀越二郎 の半生を描いた作品ではあるものの、堀辰雄の小説「風立ちぬ」や「菜穂子」から得た着想も織り交ぜられているフィクション作品です。
さすがの宮崎作品、感想としては「素晴らしい」の一言に尽き、観終わった後に何とも言えない重たい問いが胸の奥に残りました。
「大切な人と如何に生きるか?」
生きると言うこと、働くと言うこと、夢を追うと言うこと、責任を果たすと言うこと、理不尽なこと、抗うことができない運命に対峙すること。色々な事柄が本作には描かれており、物語ではあるのだけど、複雑で思うようにはいかない様がどこか人生の様でもありました。
しかし、僕らの人生は物語では無く、一度きりしか無い現実世界の出来事です。漫然と過ごしている内に時間は過ぎ去っていきますし、大切な人と過ごせる時間はいつか終わりがやってきてしまいます。
夢をひたむきに追いかけ、人生を賭けて仕事に打ち込む主人公<堀越二郎>はひたすらに羨ましくもあり、あの様に何事かを成し遂げたいという衝動に駆られずにはいられませんでした。そして、時に挫折し、制約との戦いに苦悩する様にはとても共感を覚え、それを乗り越える様には実に多くの勇気を貰いました。
また、私たちは刻一刻と過ぎる時の中で人は老いを重ね、いつかは死を向かえます。それが早いか遅いかは誰にも分かりません。当然のことながら、老いと死は自分だけで無く、周囲の人にも訪れるわけですから、今しかできないことをやる機会は、二度とは巡ってこないのです。
遠く離れて暮らす両親や兄弟に会いに行ったり話をすることは勿論、奥さんと何気なく交わす日常の会話や、一緒に過ごす休日をもっと大切にしないとなと反省せずにはおれませんでした。今後生まれてくるであろう我が子との時間も然り、もっと自分にとって大切な人達と共に過ごす時間を一日一日大切にしていきたいと切に願っています。
今回「風立ちぬ」を観て、自分自身がやりたいことをやって悔いの無いように生きるだけでなく、それもひっくるめて大切な人と如何に生きていくかってことを猛烈に考えさせられました。人生や仕事に対して夢や希望を持つだけで無く、挫折も理不尽もひとしきり味わってきた30歳というタイミングで、本作と出会えて本当に良かったと思います。