以前公開した大谷大さんとのコラボ動画でYouTubeチャネルのタダオト「ChatGPTについてHacksTVとコラボ対談!個人がAIを仕事で使うようになる未来について話しました!」でも話したのですが、今後のビジネスでAIが活用出来るか否かが競争力の源泉になりそうだなと考えているので、動画で話した内容を元に考えている事をまとめておきたいと思います。
「ChatGPTについてHacksTVとコラボ対談!個人がAIを仕事で使うようになる未来について話しました!」
ちなみに私は仕事でAIを用いたネットワーク運用について色々取り組んできた人間なので、ある程度AIに関しては技術的なバックグラウンドを持っているのですが、ChatGPTは使い始めたばかりですし、個人の生産性向上にAIがどのように使えるかはまだまだ研究の途上にあります点、ご容赦ください。
ChatGPTを企業が活用するハードル
情報セキュリティと利便性のせめぎ合い
今流行のChatGPTですが、情報セキュリティがしっかりしている会社だととりあえず「使用禁止」にしている可能性が高いと思います。
というのも、ChatGPTは基本的にクラウドベースといいますか、OpenAI社のサーバーに情報を送ることになるため、機密情報や個人情報をアップロードするのは情報セキュリティの観点からかなりマズいのです。
これを解決する方向性としては2つあり
- イントラネットワーク上で利用できるパッケージ提供
- クラウド上で暗号化されたネットワーク/ストレージを用意し、テナント化してデータセパレーションとユーザアクセス制限を確実に掛けていく
最近は企業や官公庁でもクラウドの活用が進んでいて、Microsoft365やBox、GoogleSuiteでのデータ共有はここでいう2つめのオプションに相当します。ChatGPTがそこまで考慮したインフラ設計になっているかは分かりませんが、技術的には「枯れている」領域ではあるので、対応は時間の問題ではないかと思います。
一つ目のオプションは悪くはないのですが、大衆が使うことによって膨大なフィードバックが得られるクラウド型に比べてどうしても回答の精度が悪くなってしまいます(逆に言えば変な汚染もなくなる)。個人的にはクラウド提供で企業データとアクセスのセパレーションだけしっかりやりつつ、大衆側のデータやモデルを活用できる形が主流になるんじゃないかなと思っています。
今後ChatGPT等のAIを上手く取り込める会社が強くなる
ChatGPTを使ってみて思うのは「これは上手く使えばものすごく生産性が上がる」というモノでした。クリエイティブが求められる仕事にどこまで使うかは議論が必要ですが、事務作業や定型的な報告/文書作成には今後どんどんAIが使われていくだろうと思います。
例えば、契約書。ゼロから書けと言われれば辛いですが、契約のタイプや条件を教えると契約書のひな形をAIが生成するというのはそれ程難しい話ではありません。実際AIが契約書をレビューするサービスというのもあるぐらいで、契約書作成自体をAIがやって人が最終的に決裁する時代はそう遠くはないでしょう。
また、報告書等の文書を作成する能力というのは人それぞれ異なります。例えテンプレートを作ろうと、例文を充実させようと文書を作るのが苦手な人にとっては億劫な作業であることは間違いありません。
例えば、営業という職種で考えた時、重要なのは売り上げを上げることであって素晴らしいレポートを作成することではありません。しかしながら上司は業務管理の観点から報告書を求めますし、個人ごとのKPIを追いかける必要もあるわけです。
ChatGPT等のAIを活用することで、より付加価値ある仕事、営業であれば客先に行って受注を獲得することに多くの時間とエネルギーを割くことが出来れば、かなりダイレクトに労働生産性に作用することが考えられます。
かつてOfficeのマクロで実現できないような作業自動化をRPAで自動化する事が持てはやされた時代がありましたが、ChatGPTは非定型業務ですら自動化が可能になります(正し、RPAの用にPC操作そのものを自動化できるわけではない)。
個人もAI活用リテラシーで生産性が100倍変わる時代がやってくる
現在のChatGPTの回答精度は平均で6,7割ぐらいと感じています。モノによっては100%素晴らしい回答もあるし、モノによっては全くでたらめな場合もある。多くの人が知っている或いは調べる情報であれば100%の回答だし、マイナーなジャンルになればなるほど回答の精度が下がります。
僕はモバイル業界のシステム屋をやっているのですが、例えばググれば出てくるような一般的な情報についてはかなり高い精度というか模範的な回答を出してきてくれます。
ただ、あくまで一般的に得られる情報を元に回答を出しているので、少しツッコんだ質問をすると割と「可能性がある」とか「一概にはいえない」みたいな感じの苦しい感じの回答になります。この辺にデータでもって答えられるようになると有用なのですが、もしも我々がChatGPTの回答レベルの報告を挙げたら「ちゃんと仕事しろよ」と叱責されてしまいます。
ちょっと聞き方が悪かったかも知れませんが、もう少しだけツッコんだ質問をしてみると一見良さそうな回答に見えるのですが実際には関係ない話や、専門家の立場からするとちょっと違うだろうという情報が混じっています。
ただ、正直に言ってこの手の情報をこの精度で返してくれるのは驚きです。多分、TMForumと3GPP/ETSIのリエゾン関係がどのWGレベルで行われているかなんて興味ある人日本に数人しかいないんで。
個人的に使えるなと思うのは以下の様な作業で補助ツールとして活用することです。
- メールや報告書などの文書のたたき台を作って貰う
- 自分がある程度知識がある領域の調べ物に使ってたたき台を作り、そこから自分で修正や追加調査を行う
- プログラムやマークアップの生成/エラー対処
- テキストデータをマークダウンやhtml等で表やマインドマップ形式に変換
- 全く知らないジャンルの学習のとっかかりにする
- 翻訳も意外に使える
- APIを使えば更に色々応用が利きそうですが、この辺は今後の研究と言うことで。(いずれはリアルタイムに自分と掛け合えるAIアシスタントを作りたい)
つまり、現時点でも自分の作業を効率化するための補助ツールとしてはかなり優秀で、ビジネスの方では情報セキュリティの観点からかなり制約があるのですが、一般的な調べ物や、メールや文章のテンプレートを作って貰う用途としては十分に仕事でも使えてしまいます。
今後、個人としてChatGPTの様なAIをどのように自分の”作業”効率化に役立て、仕事で求められる”成果”につなげていくかが個人の生産性(創造する付加価値)向上に大きく関わってくるのは間違いないと思います。人間はよりアイデアや最終成果物に仕立て上げるディレクション分野に重きを置くことになるでしょう。
優秀なプログラマーと新米プログラマーでは100倍以上生産性が違うなんて事はザラでしたが、今後は情報を扱うホワイトカラーの世界でもAI活用リテラシーの有無で100倍以上の生産性の違いが出てくる世の中になるんじゃないかと思います。
個人の活動におけるChatGPTの活用
正直まだ使いこなせているとは言いがたい
今のところ、個人で行っているブロガー/Youtuber/PodcasterへのAI活用というのはまだまだ出来ていないというのが実情です。後述しますが、正直自分のクリエイティブな活動にAIを組み込むことに少し抵抗を感じています。
ということで、今のところ活用の方向性としてはネットで情報を調査して、いちいちコピペをして表を作るのが面倒なモノとかをプロンプトで組み立てていく使い方が良いかなと考えています。文章そのものというよりも、参考資料やネット上にある記事のフォーマット変換ですね。
例えば、Nikon Zシリーズの比較表を作ってくれと言うとこんな感じで作ってくれます。本来は比較軸をもう少し整理したり比較対象を指定した方がいいと思うのですが、こんなアホな質問でもそれっぽい比較表を作ってくれるGTPちゃん凄。
4K自撮り可能なコンデジで比較表を作って貰うとこれまた良い感じです。ただ、今売れ筋の「LUMIX DC-TZ95D」「PowerShot SX740 HS」あたりも本来なら表に入れてほしいところです・・が、そういうのはちゃんとプロンプトで指定すればOKです。
この表をマークダウンにしてもらいましょう。
そして、先ほど入れてほしかった「LUMIX DC-TZ95D」「PowerShot SX740 HS」についても追加を指示
Amaaaaaaaaazing!!ついでだ、Amazonアソシエイトリンクも貼ってしまおう。
そして完成したのがこちらの表です、ご査収ください。(ちなみに上記プロンプトで生成されたアソシエイトリンクは動作しなかったので後で手動で修正しています。アソシエイトリンク自動で張れるスクリプト・・研究します。)
モデル名 | 4Kビデオ | 自撮り | レンズ | 解像度 | 最大シャッタースピード | 価格(参考) | リンク |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Sony RX100 VII | ○ | ○ | 24-200mm相当 | 20.1 MP | 1/32000秒 | 約15万円 | リンク |
Panasonic Lumix TZ200 | ○ | ○ | 24-360mm相当 | 20.1 MP | 1/16000秒 | 約7万円 | リンク |
Canon PowerShot G7 X Mark III | ○ | ○ | 24-100mm相当 | 20.1 MP | 1/25600秒 | 約9万円 | リンク |
Fujifilm X100V | ○ | × | 35mm相当 | 26.1 MP | 1/32000秒 | 約18万円 | リンク |
Sony ZV-1 | ○ | ○ | 24-70mm相当 | 20.1 MP | 1/32000秒 | 約10万円 | リンク |
LUMIX DC-TZ95D | ○ | ○ | 24-720mm相当 | 20.3 MP | 1/16000秒 | 約6万円 | リンク |
PowerShot SX740 HS | ○ | ○ | 24-960mm相当 | 20.3 MP | 1/3200秒 | 約4.5万円 | リンク |
後は個人的に使うスクリプト作成の補助的にちょろっと使っているぐらいですが、もうちょっと使いこなせるようになりたいなーという想いがありますので、また新たな活用方法を編み出したらブログで共有していきたいと思います。
クリエイティブな部分にAIを組み込む難しさ
文章にせよ話す内容にせよ、基本的にはそこにAIを組み込んでいくというのは少し抵抗があるというのが正直な所です。例えば、大まかなプロットだけを書いて文章をChatGPTに生成させた場合、果たしてそれを自分の記事/作品と胸を張って言えるかという事です。
効率よく記事を書くとか、ChatGPTで調べた内容をそのままコピペして記事にするとか、そういうライターが今後増えてくるというか、むしろ今まで1記事数千円でランサーズなどで発注していた発注元が、自らChatGPTで記事を下書きさせて、監修を専門家にお願いするみたいな形が増えてくることが想定されます。
私も過去にいくつか監修を引き受けたことがあるのですが、ChatGPT以下の文章を全面的にリライトする羽目になって辟易したので、この手のググった内容コピペライターは全面的にChatGPTに駆逐されるんじゃないかって意味では、むしろ悪くはない流れなのかなとは思います。
まぁ、そこまでビジネスライクになればChatGPTを使って書いた文章がどうのって部分はある程度割り切れると思うのですが、自分のブログの記事をChatGPTが出力したものをそのまま貼り付けるか・・というと流石にそれはNoだなと。
どうまとめようかなーと悩んでいることを一旦ChatGPTにまとめさせてみて参考にするとか、そういう壁打ち的な使い方や一人ブレストの相方として使うというのは今でもやっているのですが、文章そのものを書かせるということは今のところ考えていません。
作品ではない部分へのChatGPT活用
ただブロガー/Youtuber/Podcasterといった活動の中で、記事や動画、音声コンテンツを作ることだけが全てではありません。例えば、以下の様な作業に対してChatGPTを使うというのは悪くないアイデアの様に思います。
- YoutubeやPodacstの概要欄
- Blogの要約文、タグ付け
- イベントを開催するときの告知文
例えばBlogのアイキャッチやYouTube/Podcastのサムネイルなんかにも画像生成AIをつかっていたりしますし、そういう作品の周辺情報であったり、作品とは自分がみなさない文章の作成であれば心置きなくChatGPTが活用出来そうです。
AIによって個人のリテラシーの底上げされる時代がやってくる
最近TodoistやNotionにもAIが組み込まれた様に、徐々に個人の生産性ツールの領域にもAI技術が適用されはじめています。これらによって人は何もしなくても、何もかも自動的に処理される・・みたいな世界はまだまだ来ないとは思いますが、AIによるアシストは期待できる時代になったと思います。
例えば、タスク管理のことがよく分からない人でも、AIのサポートを受けながら適切なタスクの分解や、締め切り設定が行える様になる(実際ChatGPTのタスク分解は優秀)でしょうし、個々人の傾向を集め続けるとAI側が計画の段階からSuggestionしてくれるようになるのではないかと思います。
文書作成もそうですが、今まで契約書を作ったことがない人でも、今まで仕様書を作ったことがない人でも、AIのサポートを受けてとりあえず作り上げるところまではいける可能性はあります。(その後の有識者のバリデーションは必要だけど)
つまり、仕事のリテラシーやツールの使い方のリテラシーが高くない人が、今まで同僚の助けが必要としていた場面にAIが活躍する可能性が高いという事です。それはある意味でリテラシーの底上げとも言えますし、組織としてみたときに教育コストが劇的に下げられると言うことでもあります。
他にも、プログラミングをやったことがない人であっても、ChatGPTの助けを借りることでプログラミングを独学で身につけることが比較的容易になっています。
これらのことから、今のうちにChatGPT等を個人ででも触っておいて、自分がやりたい事をサポートするツールとして活用出来るようになっておくことは、今後到来するAI時代を生きるにあたり大変有用なのではないかと思います。
さいごに
本記事ではYoutubeチャネルタダオト「ChatGPTについてHacksTVとコラボ対談!個人がAIを仕事で使うようになる未来について話しました!」の内容をベースに、僕らは今後のAI時代に向けてAIと今のうちから仲良くなっておいた方が良いよ、という内容をお伝えしました。
ぶっちゃけ、AIがシンギュラリティを迎えて人類を駆逐する・・みたいな世界は今のAI技術だとやってこないとは思うのだけど、AIによってなくなる仕事があるというのは間違いないと思います。(コピペWebライターとか)
ただ、我々個人サイドとしては、どの仕事がAIによって置き換わるかって話よりもまず、今まで自分がやっていた作業の内AIで効率化されるモノがあって、自分がAIを使いこなせないと、その職種における競争力を失う可能性があるって事の方に注意を向けるべきだと思います。
どんなに素晴らしい発想力やプレゼン力を持っていても、他の人がAIを使って5分で終わる事務作業に1日掛かるのでは、ちょっとビジネスの世界で生きていくのは難しいかも知れません。逆に言えば、AIが更に進化し、我々をより簡単により良くサポートしてくれるようになれば、我々はもっと付加価値を生み出すことに専念できる訳ですから、むしろ喜ぶべきことであろうと思います。
ということで、結論「今の内にもっとAIと仲良くなっておきましょう。」ってことで。
次の記事では「クリエイティブな活動へのAI活用」について述べたいと思います。
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