スティーブ・ジョブズがこの世をさる1年半前、2010年6月のthe D8 Conferenceで「スタンフォード大学のスピーチに何か付け加えることはありますか?」という質問に答えた言葉がグッと来た。
“I have no idea.Probably I’m just turn up the volume on it because the last few yeas reminded me.Life is fragile.”
実は今までこのカンファレンスの動画を見たことも無ければ、Jobsが語ったこの言葉も知らなかった。
■Life is fragile(人生は儚い)
この動画を見て真っ先に思い出したのが、スタンフォード大学のスピーチでJobsが語った死生観(メメント・モリ)だ。以下はスタンフォード大が公開しているスピーチの書き下ろし文の一部抜粋。
When I was 17, I read a quote that went something like: “If you live each day as if it was your last, someday you’ll most certainly be right.” It made an impression on me, and since then, for the past 33 years, I have looked in the mirror every morning and asked myself: “If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?” And whenever the answer has been “No” for too many days in a row, I know I need to change something.ーText of Steve Jobs’ Commencement address (2005)より引用
意訳付の解説を入れると、「毎日があなたの最後の日だと思って過ごしてみれば、いつの日かあなたが最も正しいと思う生き方ができるだろう。」という言葉に出会った17歳のjobsが衝撃を受け、それから33年間毎朝鏡に向かって「今日が人生最後の日だとして、今日やろうとしていることは、本当に自分がやりたいと思っていることだろうか?」と問うようになったというエピソードである。(全文の和訳を読みたい方はスティーブ・ジョブズの感動スピーチ(翻訳)字幕動画を参照)
17歳からほぼ毎日、常に死を意識して生き、2005年のスタンフォード大学でのスピーチの1年前に膵臓がんで一度死を覚悟することになったjobsが語る死生観は説得力があった。僕自身、毎日をもっと大切に生きたいと願うようになった。
そんな死生観を持つjobsが最終的に行き着いた答えが「Life is fragile(人生は儚い)」であったことに、そして、その言葉を語る動画の中のjobsが僕の持つjobsのイメージよりも随分と生気を失いつつあったことに、驚きとはまた違う、何か突き上げられるような感情を得た。
この1984の広告を満面のどや顔で紹介するあの青年が、その後27年の波乱の人生の中でたどり着く答えが「Life is fragile(人生は儚い)」である。
まだやりたいことが沢山あり、それが可能なポジションにいたはずの54歳が、かつてガレージから始まった会社を自分の死の直前に時価総額で世界最大の企業に育てた54歳が、恐らくは死期を悟り「人生は儚い」という言葉をあのスタンフォード大学のスピーチに付け加えた。
この時jobsが何を想い、どういう意図でこの言葉を残したかは、今となっては分からない。ただ、僕の中で未だ名前の付けられない感情を呼び起こした、jobsの表情とその言葉の意味を、恐らくこの先の人生の中で探していくことになるのだろうと思う。
■横浜百景No.009 氷川丸と山下公園
今はもう動くことのない氷川丸。
かつては北太平洋航路で活躍していた船です。
昭和初期の造船技術やインテリアを伝える貴重な産業遺産であり、
横浜の人気観光スポットとして、今も多くの人から愛されています。