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【書感】『会社を元気にする51の「仕組み」』は会社をよくするヒントが満載!

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昨年末、かつて同じ職場で苦楽を共にした、アクロクエストという会社のエンジニアさんと忘年会をしようという話になった折、

「今度うちの会社の取組をまとめた本が出るんですよ。よかったら献本するんで書評書いて下さい。」

と、御献本の提案があり、興味があったので二つ返事で献本頂く事にした。

というのも、僕が知っている範囲では、この会社の社員は実に「エンジニア」であることに誇りを持っており、技術への探究心であったり、自分たちの技術力への自信が非情に強く、その源流が何なのかずっと疑問だったからだ。

しかしながら、この時安請け合いをしたことを僕は後悔することになる。

■ユニークな会社を測る尺度を持ち合わせていない

後悔の理由は簡単だ。

本書では、「働きがいNo.1」アクロクエストという会社のユニークな取組がざっと51個紹介されており、その内容は実にユニーク。

なのに僕はと言えば、昔ながらの典型的日本メーカーで純粋培養されてきた”ニッポンノサラリーマン”であり、ユニークな施策を次々と繰り出す、ユニークな会社を推し量るだけの尺度を持ち合わせていないことに、読んでいる途中から気づいてしまったのだ。

この本を読んで自分が如何に「会社とはこういうモノ」という固定観念に凝り固まっているかということを思い知らされた。まずはこの事に気づけただけでも、この本を読んだ価値がある。

だがしかし、書評を書こうとするとかなり厄介な状況だ。

とりあえず、まずは「会社としてどうこう」や「施策としての善し悪し」みたいなものは脇に置いておいて、自分が感じたこと、考えた事を中心に述べていこうと思う。

■ユニークな施策と組織のカンケイ

まず、本書を読んでビックリした施策(というか、制度?)を3つ挙げたい。

・MA(全社員会議)
・全社査定(ハッピー360)
・初任給公開交渉 

MA(全社員会議)は月イチで開催される、原則全社員が参加する会議のことだ。そこで決定された議題は即座に実行されるらしく、本書に紹介されている施策もこの会議から生み出されているとのこと。

「私情をはさまない」「徹底的に議論する」「コミットできない話題のときは退出する」という鉄則があるとしても、数十人いる社員で交わす議論が、冷静かつ徹底的に収束できるというのは、それだけで尋常ではない。

また、全社査定も社員一人一人の評価と報酬を、全社員で査定するというもので、

  • 「自己評価」
  • 「マネージャー陣評価」
  • 「全体査定会」

とステップは踏むものの、最終的に全員分の評価と報酬を全社員が納得するまで議論するというのは、考えただけでも大変なことであり、評価と報酬が社員全員で共有されるという、かなりチャレンジングな施策だ。

初任給更改交渉は現在中止しているようだが、新入社員が自分が如何に価値ある人材かをプレゼンして初任給の交渉を行うというものであり、これも完全オープン。 

ある意味全員で集まれる規模のメリットを活かした施策ともいえるし、意思決定できるトップとが参画している、或いはこういう直接民主制的な物事の決め方を是とするトップがいるから成立する施策といえる。

■仕事のフレームワーク化をないがしろにすべきではない

また、読んでいて興味深かったのが、

  • Acronote(15分単位で1日の仕事の予実を記録するノート)
  • 指示出し、指示受けフレームワーク (指示内容及び、指示を受ける側のテンプレート)
  • ほうれんそうシート(報告・連絡・相談のテンプレート)
  • SPATメモ (ミーティングや電話のメモ取りフォーム)

といった、日常業務のフレームワーク化である。これらの施策は生産性向上に大きく寄与することは想像に難くない。

例えば、ホウレンソウが大事と言う人は多いが、具体的にホウレンソウをどうすれば良いか教えてくれる人はごく少数だ。

日本の会社はどこか「仕事は見て盗むもの」的な発想に支配されており、メモの取り方、ノートの取り方、情報収集の仕方、ドキュメント管理、思考のフレームワークなどは個人技として考えられている節がある。(むしろ、上司先輩社員側もこの辺のリテラシが低くて教えられない可能性は高い)

そういう意味で、ホウレンソウすべき事項を予めフォームにしてしまうというのは、実に合理的な発想だと思う。ある程度は教える手間も省けるし、ホウレンソウのやり方を教えるのも楽になる。

些細な事に見えるかも知れないが、この辺りのリテラシ如何で組織としての生産性は何倍も変わってしまう。トラブルを未然に防ぐことで無駄な手戻りも防げるし、報告すべき内容などで迷う必要もなくなる。

ちなみに、Acronoteはネット販売もしているので、以下の画像を見てみてピンときた方は販売ページをチェックして頂きたい。

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(画像は販売ページから転載。)

正直なところ、この本で書かれている施策の半分位は、トップマネジメントが決めない限り取り入れるのは難しいが、こういった業務のフレームワーク化は比較的容易に取り入れやすいし、まずは自分からはじめてみる事も可能だろう。

■この本は事例として読むべき

会社の取組を紹介する本なので致し方ないのだけど、この本はあくまで「アクロクエストという会社の事例集」であると考えた方が良い。

設立から25年を経た会社が、様々な紆余曲折を経て組織文化と共に育て上げてきた施策の数々であり、それを汎化することなく、ほぼ自分たちがやっている形のままで紹介している。

この場合の良い点は、実にライブ感と真実味を伴うところ。悪い点は、それを自分の会社に取り入れるためには、その施策を一度汎化して、自分たちの組織向けに特化させる作業が必要となることだ。

本の書き手が、読み手に対して何を伝えたいか次第ではあるが、「はじめに」にの最後の一節を読むと少し見えてくる。

本書がみなさんの会社を元気にするヒントになり、そして、日本の社会が社風の改善によって活性化することになれば、こんなに嬉しいことはありません。

「はじめに」や「おわりに」の文面から見ても、非情に自社愛が強いことがわかるし、本書を通して「私たちは〜」という書き出しが非常に多いことからも、基本的には「私たちの取組を紹介したい!」という想いが前提にあり「それをヒントにして欲しい」というスタンスである。

それが良い、悪いという話ではない。本を紹介する記事を書く以上、この本を必要とする人に手にとって貰いたいのだ。

或る会社の事例を読み、そこからエッセンスを抽出して自社の改善に役立てられる人、自社の改善アイデアを常に考えていて何か刺激が欲しい人、ベンチャー経営者などにとっては本書は実に有用だろう。

■試行錯誤の過程が見たかった

惜しむらくは、本書に紹介されている「施策」に対する評価については、経営者目線からだけでなく、もっと社員や社外の声も載せていれば良かったんじゃないかなってこと。

特に、この本に書かれている施策に対する評価が、プラスの面のみしか書かれていなかった事が勿体ないと感じた。(いくつかの施策には試行錯誤の過程も書かれていたのだけども)

何を目的にしてはじめ、そのために何を諦めたのか。どういった課題があって、どうやって乗り越えたのか。今の形に落ち着くまでにどんな紆余曲折があったのか。恐らくは、価値観が合わなくて会社を去ることを決めた社員もいたことだろうと思う。

ベストプラクティスも重要であるが、試行錯誤の過程そのものに価値がある場合も少なくはない。特に、会社組織を改善することを目的とした本であるからこそ、失敗や軌道修正の情報が凄く大事なのだ。

■最後に

ちょっと辛口なコメントもさせて貰ったが、本書が私たちが会社組織をよりよくしていくためのアイデアを提供してくれる本であることは間違いない。

それと同時に、これだけのユニークな施策を実行するユニークな会社として「2015年 働きがいある企業No.1 (25名〜99名部門)」に選ばれた理由の一端がよく分かる本でもあった。

もしもあなたが会社をよくするヒントを求めているのだとすれば、本書はきっとアイデアを引き出す良い刺激となるだろう。

 

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