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【書感】明日の僕らの笑顔を守るためにー『「うつ」とよりそう仕事術』

本書が発売されてから、また、僕自身が本書を読み終えてから長らくレビュー記事を書くことができずにいた。筆者である@kazumotoこと酒井一太さん(以降Kazumotoさんと表記)は兄と慕う方であり、応援したいという想いは強くあったにも関わらず、だ。

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正直に申し上げるなら、僕はこの本を読むのがとても辛かった。

Kazumotoさんがこれまでどの様な道を歩まれてきたかは、直接ご本人の口からも聞いていたが、改めて活字にされたその静かな闘いの様子を見て、僕はどうしようもない気分になって泣いてしまった。

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ベックさん、全然痩せないね!w

 

なんて、軽いノリで僕をいじる横で、Kazumotoさんは今もなお戦い続けている。その闘いの記録と、その中でKazumotoさんが見いだした「工夫」が詰め込まれた本書の内容はチープな表現かも知れないが、壮絶であり、それ故に力強いメッセージを持っている

本書を読み終えたあと、僕は本書のすばらしさを可能な限り多くの人に正しく伝えたいと思った。しかし、そう思えば思うほど、どう表現すれば良いのか分からなくなってしまい、遂には本書の発売から半年以上が経過してしまった。遅くなってしまったが、僕が2011年に出会った本の中でもっとも強烈な一撃をお見舞いされた『「うつ」とよりそう仕事術』を紹介したいと思う

※Kazumotoさんの事をご存じない方は是非氏のブログ「Find the meaning of my life.」を一読頂きたい。

誰もが「うつ」とは何かを知っておくべきである

僕が身を置くシステム業界の特性からか、社会人生活を送ってきたこの7年の間に休職/復職した同僚や上司と接する機会が多かった。その中でも、僕が苦しんだ時期に支えてくれた先輩や、僕と同じチームにいた後輩が休職を余儀なくされたときに、僕は何も為す術を持たなかった。

むしろ、僕は何とか力になりたい、励ましたいと思う余り、「むやみに「ガンバレ」は言わない方が良い(p94)」の逆を思いっきりやってしまっていたのかも知れない。

復職したばかりの後輩に対して、僕は果たして正しい接し方、正しい仕事の割り振り方、正しい仕事上のアドバイスが出来ていたであろうか?答えは否だろう。

この本に後数ヶ月早く出会っていれば僕はもっと違う手が打てたかも知れない・・僕は自分自身の無知とそれ故の無力さに後悔の念を抱かずにはいられなかった

うつ病は周囲の心からの理解と協力がどうしても必要な病なのです(p100)

今からでも遅くない。僕は周囲を巻き込んで、この病気についての理解を深める努力をしなければならない。その為に、僕は本書を、もしくは本書のエッセンスを職場に広める必要があると考えている。

更に言えば、誰しもが自分自身の心のケアを行う術は持っておくべきであり、不安を書き出すことで「「敵を知」り、対策を講じる(P90)」ことが出来るようになれば、自分の身を守ることもある程度はできるようになるだろう。

自分の周囲の人の為と、自分自身のために。僕は全ての人が本書の内容を理解しておくべきだと確信している。

敵を知り、手を打つための仕事術

本書には「仕事術について書かれた本」という側面がある。

その中で語られていることは大きく2つに分かれる。
一つはうつ病という「敵を知る」ための術
もう一つは明らかになった敵に対して「手を打つ」ための術

GTDの収集や、睡眠のログ(ライフログ)ユビキタスキャプチャといったライフハック界隈では比較的よく聞くキーワード は前者の術として紹介されている。

そして、そこで明らかになった敵に対するために、一日のシナリオを練りスタートダッシュを切って大逃げを打つといった「手の打ち方」が紹介される。

ライフログを取るのはニヤニヤしたいからではなく「睡眠時間を把握することは、落ち込みの波を把握すること(p45)」だからであり、ユビキタスキャプチャーは「不安」という目に見えない漠然とした物の全体像を把握するために取っているという。

かつてこれほどまでに目的がはっきりしている(必要性を強く感じる)仕事術を僕は見たことがないKazumotoさんがこれまでの戦いの中で構築されてきた仕事術の数々は文字通り血と汗と涙の結晶である。

明日の僕らの笑顔を守るために

当たり前のことができなくなる、眠れなくなる、自殺念慮に囚われる、身体も感情もコントロールできなくなる、人と話すことに恐怖を覚える・・正直に言えば、僕は本書に書かれていたこれらのことを想像すらできない。

朝起きて出社する練習をしたり、見知らぬ人に話しかけて道を尋ねたり、ウェイターやコンビニの店員さんに声をかけたりして「できる」ことを確認する・・・こう言った道程を辿って、kazumotoさんの今があるのだと思った時に涙が止まらなくなった。

会社の同僚にも休職を余儀なくされた人がいることは先述の通りだけど、過去には親友が「死にたい」というのを必死で止めたことなどもある。彼らがそれ程までに追い詰められるまで、そして、追い詰められても尚何も出来なかった自分に苦悶した。冒頭にも書いたことだけど、本書がもっと以前に出版されていれば僕はもっと色々な手が打てていただろうと思う。

勿論、そんなことを言っても過ぎた過去は戻らない。一つだけ言えることは、本書を読まなかった未来よりも本書を読んだ未来の方が、きっと僕らの周囲に笑顔が多くなる、ということだ。

明日の僕らの笑顔を守る為に必要な事が書かれている『「うつ」とよりそう仕事術』はそういう本であると確信している

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